コラム

【遺産分割協議書】記載例付き書き方のポイント

 遺産分割協議書とは、相続開始後、共同相続人全員で話し合い「だれが」「どの財産を」「どれだけ」取得するのかを明記した書類となります。決められた様式はありませんが、書き方を間違えてしまうと不動産登記等に使用できない場合があったりしますので注意が必要です。

遺産分割協議書作成までの流れ

 いきなり遺産分割協議書を作成するわけにはいきません。必要な調査を行ったうえで作成していきます。

相続人調査

 まずは相続人調査をして相続人を確定させる必要があります。なぜなら、共同相続人のうち1人でも除いて行われた遺産分割協議は無効となってしまうからです。具体的には、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本等と、相続人の戸籍謄本等を取得し、相続人を確定させます。その際、認知事項の記載や養子縁組事項の記載は見落としやすいので注意が必要です。

相続財産調査

 続いて被相続人が所有していた不動産や金融資産等の調査を行います。不動産に関しては、市町村役場等で被相続人名義の名寄帳を取得します。共有名義のものを出してもらうことも忘れないようにしましょう。金融資産は、銀行等に残高証明書を請求します。残高証明書の請求は相続人の一人からすることができます。

財産目録の作成

 相続財産の調査が完了したら、財産目録を作成します。書式は特に決まっていませんが、相続人で話し合う際に見やすいものを作成しましょう。不動産(固定資産税評価額も記載)、現金、預貯金(残高を記載)、有価証券(品目・銘柄、数量を記載)、自動車(登録番号等を記載)、その他(価値のある動産など)に分けて作成すると良いでしょう。

遺産分割協議書の案を作成

 相続人と相続財産の調査が終わったら、遺産分割協議書の案を作成します。「だれが」「どの財産を」「どれだけ」取得するのかを話し合いで決めて、それを書面にしていきます。

遺産分割協議書の記載例

 被相続人の本籍や死亡時住所、不動産の記載など間違えのないように記載していきます。

被相続人の書き方

 被相続人の最後の本籍 〇〇市〇〇町〇〇番地
      最後の住所 〇〇市〇〇町〇〇番地
      氏名    〇〇 〇〇
     相続開始の日 令和4年1月1日

不動産の書き方

 第〇条 相続人Aは、次の不動産を取得する。
 土地の書き方
    所 在 〇〇市〇〇町
    地 番 〇番
    地 目 宅地
    地 積 〇〇・〇〇平方メートル

 建物の書き方
    所 在  〇〇市〇〇町〇番地
    家屋番号 〇〇番
    種 類  居宅
    構 造  木造かわらぶき平家建
    床面積  1階 〇〇・〇〇平方メートル
         2階 〇〇・〇〇平方メートル
         ※B持分2分の1

※被相続人が不動産を共有していた場合は、B持分2分の1などと記載しましょう。
※不動産の記載は、登記事項証明書のとおり正確に記載する必要があります。

現金の書き方

 第〇条 相続人Aは、被相続人Bの手許現金を全て取得する。

預貯金の書き方

 第〇条 相続人Aは、次の預金を取得する。
     〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
     B(被相続人)名義

有価証券の書き方

 第〇条 相続人Aは、次の財産を取得する。
     〇〇〇〇株式会社 普通株式100株

自動車の書き方

 第〇条 相続人Aは、次の財産を取得する。
     ①普通乗用車
      登録番号  〇〇〇〇
      用途    〇〇
      自家用・事業用の別 〇〇
      車名    〇〇
      車台番号  〇〇
      型式    〇〇
      原動機の型式 〇〇

 ※自動車の登録番号のみでは特定が十分とはいえないため、自動車車検証記載の車名や車台番号、型式などで特定をすることが必要です。

遺産分割協議書に署名・押印する

 相続人代表者が中心となり、遺産分割協議書の文案に基づき、相続人全員で遺産分割協議を行います。そこで相続人全員が遺産分割協議書に署名・押印(実印)し、印鑑証明書を全員分合綴します。原本を相続人の人数分作成して、各々原本を所持するのが一般的です。原本を1通だけ作成し、他の相続人には写しを交付する方法もあります。

相続人ごとに遺産分割協議書を作成しても構わない

 必ずしも1通の遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印する必要はありません。例えば、相続人が3名であれば3通の遺産分割協議書を作成し、相続人各人が単独で署名・押印しても協議は成立します。この方法は、顔を合わせたくない相続人がいる場合、多数の相続人がいたり、遠方に住んでいる者がいる場合には便利です。

遺産分割協議書が複数枚になる場合

 遺産分割協議書が複数枚になった場合は、その書類が1通であることを証するため、各ページのつなぎ目に契印する必要があります。契印は普通の押印に比べると難しいです。そこで、用紙がA4二枚であればA3一枚にすると契印は不要になります。三枚以上になった場合は、袋とじにしてそこに契印する方法もあります。

遺産分割協議書を添付して相続登記を申請

 遺産分割協議書の作成が完了したら、不動産の相続登記を申請します。このとき遺産分割協議書を登記原因を証する書面として添付します(遺産分割協議書は原本を還付してもらうことができます)。相続登記は不動産を相続する人が1人で申請できます。申請には遺産分割協議書と併せて次のものを添付します。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
  • 相続人の戸籍謄本等
  • 不動産を相続する人の住民票の写し等
  • 委任状(代理人が申請する場合)